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会長より

大学教育学会2025・26年度会長就任にあたってのご挨拶

松下佳代(京都大学*)
*所属は当時のものです

 このたび大学教育学会長に再任され、2025・26年度の会長職を務めることになりました。
 2023年の会長就任挨拶では、「今は大学受難の時代」であるとし、その要因として18歳人口の減少と生成AIの登場を挙げました。これらの影響は、2年前よりさらに深刻さを増しています。
 1990年代初め以降、18歳人口は減少を続けてきましたが、大学進学率の上昇や専門学校や短大から大学への再編などにより、大学入学者数は微増してきました。しかし、ついに2026年度からは減少に転じると予想されています。学生獲得競争が激化し、募集停止を余儀なくされる大学も目立ち始めています。
 一方、生成AIについても、日本の大学での利用は当初こそ緩やかでしたが、このところ急速に普及してきました。大学教員は、学生が生成AIを利用していることを想定しながら、授業や課題指示を行わざるをえなくなりました。学生に生成AIをどう使わせるのか、使いつつも学生の力を伸ばしていくにはどうすればよいのかを考えることが必要になってきました。また、教員自身も生成AIで仕事の効率化を図りつつ、個性と身体をもった人間の教員ならではの教育のあり方を考える必要性に迫られています。
 このような大学受難の時代にあって、私たち大学教育学会に求められることは何でしょうか。
 2025年2月に発出された中央教育審議会「知の総和」答申では、目指す未来像の実現のためには、「知の総和」(数×能力)を向上することが必須だとしています。しかし、日本の人口や大学入学者の「数」が減少するなかで、いくら「教育研究の「質」の更なる高度化」をはかっても、「知の総和」を現状維持することすら難しいような状況です。「数×能力」を個人単位で捉えてその総和の向上を目指すのではなく、いかに個人間・組織間の関係を豊かにしていくかが重要であると思います。すでに特定の地域内の大学間、地方と都市部の大学間、類似の機能をもつ大学同士などで多様なネットワークが築かれつつあります。それによって学生が多くの人々と出会い、学びと成長の機会を増やしていくことが望まれます。本学会のネットワークはそれにも貢献しうるのではないでしょうか。
 また、生成AIについては、本学会でも2つの課題研究が生成AIをテーマとして行われています。生成AIとライティング教育、生成AIのガイドライン策定です。また、自由研究発表やラウンドテーブルなどでも、このテーマが数多く扱われています。このような新しいテクノロジーが登場したときに、それを教育においてどう扱うかについて、会員がそれぞれに試みた実践を共有し議論できるのは、本学会の強みです。
 本学会が、大学をめぐるマクロな動向を見据えつつ大学教育をよりよいものにしていくために、大学教育についての研究的知見の共有・交流の場になることはもちろん、大学教育研究力を向上させる場や、大学教育にかかわるなかでの悩みや喜びを交換できる場にもなるよう、今後も力を尽くしてまいりたいと思います。

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 2023年の会長就任時には、抱負として、運営体制の改革と国際発信力の強化を挙げました。
 今期は代議員選挙がなく、理事については、継続を辞退された2名の方の交代のみ、執行役員も昨期と変わっていません。一方、事務局については、長らく事務局長を務めてくださった山内正平氏に代わって前事務局次長の堀井祐介氏になっていただきました。また、大会・課題研究集会の開催校負担を減らし、学会イベントとしての持続性を保つために、従来の将来構想委員会を大会・集会企画委員会に再編し、開催校の運営をサポートする体制を整えました。
 国際発信力の強化については、2023年12月に、韓国教養教育学会、中華民国通識教育学会との間でAsian Liberal Education Network(ALEN)の協定が交わされ、昨年9月には、国際委員会(杉本和弘委員長)、担当常務理事の山田礼子前会長のご尽力により、東北大学にて、第2回Asian Liberal Education Conference(ALEC)が開催されました。今後は、停滞しているAAC&U(American Association of Colleges & Universities)との連携強化もはかっていただく予定です。
 大学受難の時代だからこそ、大学教育学会に参加したおかげで新しい知見が得られた、仲間ができた、元気が出たと感じられるような学会活動を展開していければ、と願っています。会員、理事、代議員のみなさまとのコミュニケーションを大事にしながら、持続的で発展的な学会として、大学教育研究・実践を先導していきたいと思います。 
 この学会に集うみなさまが、それぞれの形で学会活動をより面白く活気あるものに創り上げていってくださいますようお願い申し上げます。

2025年12月10日